北井一夫写真展を終えて|隠岐の島町図書館 中林眞

隠岐の島町図書館職員のみなさんと実行委員会スタッフ(手前左:中林館長)

 

 この度の北井一夫写真展は、隠岐の島町図書館が平成11年に開館して以来最大の展示企画であり、私たちの記憶に刻まれる出来事となりました。

 開催期間である令和5年10月1日から11月30日までの当館来館者数は10,446人であり、島内外を問わず非常に多くの方々が写真展を鑑賞されました。尚、昨年同期間の来館者8,845人と比較すると1,601人の増となっており、当作品展に対する注目度の大きさが伺われます。

 まず来館者の多数を占める地元住民ですが、写真展を目的に来館された方はもとより、本を目的に来館された方についても北井一夫氏の作品の世界に引き込まれ、熱心に鑑賞される姿が見受けられました。高齢の方は50年前の隠岐の風景を懐かしみ、思い出話に花が咲く場面も。館内で、写真に記録された場所がどこかについて情報提供を募ったところ、住民から沢山の情報が寄せられました。図書館の「人と人との交流の場」コミュニティとしての役割を再認識したところです。

 本格的な芸術作品に触れる機会が少ない離島において、このような著名アーティストの作品展は大変貴重な機会であり、多感な子供にとっては、あらゆる能力の可能性を広げていく機会となったように思います。

 島外からは、関東、関西、四国、九州など広範囲から非常に多くの方々が当作品展の鑑賞を目的に来館されました。来場された方々から、北井先生の写真への賛辞はもとより、「書架の合間から作品が見える景観が美しい」「自然に囲まれた図書館と芸術作品の相性が良い。」などの声が多数寄せられています。

 本、写真共に「紙」の文化です。近年普及したスマホやタブレットでも書籍や写真を見ることはできますが、やはり紙や印刷の質感は伝わってきません。本の表紙のアートワークや質感を含めての文化であるように、デジタルで写真を見慣れた若い世代にも、見事に仕上げられた写真芸術の素晴らしさを体感していただけたのではないかと思います。

 図書館は本に親しむ場所であり、同時に文化を発信する場所でありたいと考えています。この度の展示をきっかけに、今後も人と人のつながり、ゆとり、やすらぎの場となるよう取り組んでまいります。

 この度の企画にご尽力いただいた北井一夫氏をはじめ、展示スタッフの皆様、実行委員会の皆様に心より感謝申し上げます。

隠岐の島町図書館 中林眞