展覧会レポート #2

北井一夫写真展 第1回プレ展示「額縁と額装」

東條 守

 「北井一夫写真展 in 隠岐」を開催するにあたり一つのこだわりがありました。「隠岐ヒノキを使って隠岐で額縁をつくれないか」、その額縁に「1974年当時の隠岐の島町の写真を飾れないか」。それが可能なら隠岐による隠岐のための写真展になるのではないか、というものでした。

 実行委員会委員長木下越雄が隠岐で材木業を営んでいた経験から、ヒノキを加工して額縁を製作できる「谷田工房」(隠岐の島町)を見つけてくれました。

 さっそく大阪の業者に依頼して額縁の図面を谷田工房に送り、製作依頼をしました。写真はその時のサンプル品です。

 フレーム(額縁のメインとなる外枠の部分)の仕上がり具合はとても良いものでした。艶やかなヒノキの木目が美しく、木材が自然に発光しているようにヒノキの香が漂い、温かみある逸品でした。額縁の裏板押さえもヒノキ材で溝にはめる頑丈なもので作品を保護しています。

 額縁には花からとったオイルと北海道産の蜜蝋を使い作り出した国産のワックスを、ごく薄くひくことで柔らかな手触りのする額縁が出来上がりました。

 大阪のギャラリー運営の専門家で、北井一夫写真展開催の経験もある二人に額装(作品を額に入れて展示会場を設営する)をお願いしました。2022年10月28日プレ展示会の前日、隠岐の島町図書館研修室で額装作業を行いました。その時の様子です。隠岐の谷田工房から10枚の額縁が運ばれてきました。額縁に吊り金具をつける一方、作品の入ったマットとアクリル板を額縁にはめ裏板で押さえる作業と吊り金具にひもを通す作業を行っています。

 額縁用アクリル板はクラレの光学特性板UV40(紫外線遮蔽板)を使用しています。展示品の材質劣化や変色・退色を防ぎ、写真家の作品を守ります。こうして展示用作品の額装作業が進んで行きます。

 プレ展示会第1回「村へ」で出品する作品は10枚で、「村へ」の中でも代表的な人気作品「湯治湯」「嫁入り」「渡し舟」「こたつ」「湯」「秋田行」「雪の中で」「川魚漁師」「田舎道」と今回のポスターとチラシに使用された「長屋」(いつか見た風景)です。

 もし北井一夫写真展のプレ展示会、本展示会をとおして、会場で作品購入希望者がおられて評判高くなれば、やがて隠岐産額縁が隠岐の島町の名産品になることも夢ではありません。